第2話「今は邪魔」<大作>

高度経済成長に突入していった1955年、エネルギーは石炭から石油に変わり、太平洋沿岸にはコンビナートが立ち並び始めていた。

日本が変わり始めていたその頃、大阪でサラリーマンをしていた谷口大作(たにぐちだいさく)は28歳を迎えていた。

当時では20代前半に結婚しているのは当たり前で、大作はすでに平均初婚年齢をも超えていたがまだ相手すら見つかっていなかった。
周りの友人の多くが結婚している中で大作も焦っていないわけではなかったがなんせ相手がいなかった。

周囲からは幾多ものお見合いを勧められていたがそれもことごとく断っていた。
時代としてはまだまだお見合い結婚が半数以上を占めていたが大作はお見合い結婚に対して前向きではなかった。

「必ず恋愛結婚をするのだ」

そう高々に宣言しているというわけでもなかったが、どうしてかそんな気にはなれなかった。

それに今は仕事が楽しい。

もっともっと業績を挙げて、地位を上げて、みんなから信頼される立派な男の証を手に入れたい。
だから、結婚のことも考えたいけれど相手もいない状況では考えるだけ仕事の邪魔になる。

そう考えていた。

いや、そう自分に言い聞かせていただけだったのかもしれない。

「よし!明日からも頑張っていこうか。」

一人暮らしの少し大きく感じる部屋の中で大作は小さくそう一言だけ呟いて、布団に入り電気を消した。
明日からはさらに忙しい新年度が始まるのである。

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