第2話「携帯電話」

高校を卒業して、それぞれ違う大学に進学した祐介(ゆうすけ)と浩司(こうじ)は大学で新しい友達をなかなか作ることができず、二人は大学に入って二年が過ぎても地元の高校からの友人たちとばかり遊んでいた。

祐介と浩司にあと二人を含めた四人でよく集まっては居酒屋やファミレス、そして深夜のコンビニなどで話しをしていた。
もちろん二人とも大学に全く友達がいないというわけではなかった。

それぞれ昼休みには一緒に学食で昼食を共にする友人がいたし、所属しているゼミでの飲み会などにも全く参加していないというわけではなかった。

それでも高校までの友人とは違って、大学からの友人には一歩踏み出せないというか、全てをさらけ出せないというか、どうしてかそんな感覚を抱いてしまう。

大人の階段を登っていくとはそういうことなのかもしれない。

もしくは高校からの仲間と一緒にいることがいつの日までも自分たちを子供でいさせてくれるような、そんな感覚を感じられていたからということもあったのかもしれない。
二人にとってはとりあえずその環境が心地よかった。

そんな日々の中で、ある日祐介がいつも集まるファミレスでみんなにこんな話しを持ちかけた。

「あんな今ここの携帯会社同士ならメールし放題、通話し放題ってコマーシャルやってるやん?正直今俺らの中でしか携帯ほとんど使わんやろ?三年間は学割が効くみたいやし、全員で代えにいかへん?微妙やったら三年でまた代えればいいし。」

その祐介の提案に他の三人はちょうどそれぞれが新しい携帯に代えようとしていた時期が重なっていたということもあり、間髪を入れずに満場一致した。

大学を卒業するまで後二年もあるし、卒業後も必ず役に立つだろうということでそれから一週間後にみんなで携帯を代えに行くことがすぐに決まった。

一人としてその提案に何ら迷うこともなく、まるで流れ作業のようにその話しはすぐに終わり、四人はまたいつものように違うことを話し始めたくらいであった。

そして一週間後四人は携帯ショップで横一列に並んで椅子に座り、店員さんの説明を真剣に聞いていた。
その店員さんの説明に対してこの場合はお金がかかるのか、どの時間帯なら電話し放題なのか、どのようなプランにすれば安く済むのか、などをそれぞれが質問をする。

そこがバーカウンターならばその姿は様になっていたのかもしれない。

でもそこは家族連れや女子高生もいる日曜日の携帯ショップ。
さらに対応してくれている店員さんはそれほど年齢の離れていないような若い女性だった。

様々質問を続けているとそれらの質問を全てまとめ上げるようにその店員さんが笑顔でこう言った。

「要は皆さんでメールと電話をたくさんしたいということですね。」

その質問にほんの少し間を空けながらも祐介が答える。

「…。まあそんな感じですね。」

祐介がそう答えてから恥ずかしそうに全員で顔を見合わせた。
まるで四人一組のカップルのようだった。

その時のことは今でも笑い話の一つになっている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ別小説一覧

ページ上部へ戻る
Translate »