第3話「遠距離恋愛」

 何事もなく二人の時間は流れて、付き合いだしてから一年の月日が経った。

二人の間には何事もないとは言え月日の流れというものは周囲の状況を刻々と変えていく。

恵美が就職をきっかけに実家に帰ることになった。

恵美の実家の両親も恵美が実家に帰ってきてくれることを望んでいた。

ある日の電話で恵美がそのことを太一に話した。

「そうかー、あんま会えへんくなるけどまあしゃーないな。でも良かったやん。就職おめでとう。お祝いせななー。」

太一たちが暮らしているのは京都で恵美の実家は群馬だった。

どう見ても遠距離恋愛になることは間違いなかった。

それでもそのことを聞いた太一はそんなふうになんてことないような態度をとった。

二人が離れてしまうことよりも、それ以上に就職が決まったことを祝福した。

その態度に恵美は不安になったがそれは自分が決めたことだったし、自分が決めたことを棚に上げて相手の反応を責めるほど子供ではないと、自分に言い聞かせてその時は一言だけ返した。

「ありがとう。」

その電話はいつものように太一からの「また明日」の言葉で切れた。

その日からも二人はそれまでのように過ごした。

会うのも今まで通り一週間に一度か多くて二度。

これから遠距離になることに対しての変化はこれといってなかった。

今まで通り。

むしろ今までよりも今通りというか、あえて今までのままというか、難しい表現になってしまうけれどそんな表現が正しかったように思う。

そんな太一の態度に恵美の不安は大きくなっていくばかりだった。

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