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第15話「友からの紹介」
いつも通りファミレスに集まっていた三人。
三人の中に忙しい奴などいない。
「隼、紹介とか嫌?」
隼に紹介を持ちかけた浩司は少し気まずそうな顔で問いかけた。
隼は何も言わなかった。
いや何も言えなかった。
二人がどんな思いで自分に紹介の話を持ちかけたのかがわかっていたから。
真紀との付き合い以来、隼は一人の女の子とも付き合うことはおろか女の子とは遊びにも出かけていなかった。
そのことを今ではもちろん祐介と浩司はわかっていた。
二人は隼に彼女が出来てほしいと望んでいた。
しばらく沈黙が続いたあと、隼は一言だけ言った。
「…ありがとう。」
隼の目からは涙が流れていた。
「ほんなら一応会いに行ったらいいやん。」
そう言った祐介に浩司が続けた。
「でも正直別に可愛くないけどな。」
そう冗談交じりに言ったあと三人は笑った。
気付けば店内に流れていた曲は終わっていた。
涙を拭いて笑いながら隼は決めていた。
「会いに行ってみるわ。」
真紀のことを思い続けていた隼だったが、自分を信頼してくれる祐介と浩司への気持ち。
そして真紀への気持ち。
次こそは必ず。
想いをしっかりと伝える恋をするのだと心に決めて。