小説一覧
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第19話「愛の形」<大輔>
大作と沙知の姿は大輔の心に残り、頭にこびりついて離れなかった。美保の何が好きなのかがわからなくなって別れを切り出した自分は美保に何を求めていたのかも考えてみればよくわからなかった。好きという気持ち自体が思い出せなくなって、恋愛はしばらくいいなんてことすら口にしていた。
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第18話「答えはない」<大作>
沙知へのバレンタインのお返しを孫の大輔と買いに行った帰り道に沙知の何が好きかと聞かれた大作は何も答えなかった。でもそれは恥ずかしかったからとか、言いたくなかったからとかそんな理由ではなくて、そこに答えがなかったから。50年以上も前に出会った大作と沙知。
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第17話「あなたの足になる」<大輔>
それから一か月が過ぎたころ、大輔がいつものように二人のもとを訪ねるとおじいちゃんがこっそりと大輔に耳打ちするように小声で話しかけた。「大輔、ちょっと百貨店に行きたいから連れて行ってくれへんか?。
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第16話「バレンタインデー」<大輔>
美保と別れてから大輔は美保のことを考えなくてすむことが楽であるかのようにさえ感じていた。それは大輔にとって「美保のため」が「自分のため」ではなかった証拠だったのだろう。そんな日々が続いていたある日。大輔は祖父母の家を訪れていた。
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第15話「自分のため」<大輔>
大輔と美保が付き合い始めて一年が経っていた。二人とも大学三回生を迎え、就職活動の季節に差し掛かっていて一年前のようにはバイトも入ることができず、会える機会も減っていた。その日は約二週間ぶりに会える約束をしている日だった。ほぼ毎日会っていた二人にとって二週間という時間は長かった。
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第14話「育み続けられたもの」<大作>
それから幾年が流れただろう。二人には息子二人と娘一人が出来ていた。大変な育児、子供たちの成長、全てを共に支え合い、乗り越え、喜びながら、絶えず二人の愛は育まれていた。そしてそんな子供たちもそれぞれが自分たちの愛を見つけて、結婚をして家を離れた。「これからまた二人やね。
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第13話「自分のため」<大作>
大作と沙知が付き合い始めて一年が経っていた。同時に大作はそろそろ30歳を迎えるころで、仕事も二人の関係も順調だった。でも月日が経つにつれて、時には意見が合わないことも出てきていた。
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第12話「美保のため」<大輔>
そうして始まった二人の付き合いだったが美保はどちらかというとアウトドア派で大輔はインドア派、という違いがあった。基本的にどこかに出かけたいと言うのは美保で大輔は遠出や人込みというのがあまり好きではなかった。でも大輔も美保が行きたいというのなら行きたいと思っていた。
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第11話「夢や目標の考え方」<大輔>
「昔好きだった」から付き合いたい。そんな理由で付き合いたいと思うほど、もう自分は子供ではないと大輔は思っていた。でも美保は昔も今も感じが良かった。すごくざっくりとした言い方になってしまうけれど、女の子たちを含めたバイト仲間の誰もがそう思う子だった。それに笑顔がかわいかった。
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