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第11話「夢や目標の考え方」<大輔>
「昔好きだった」から付き合いたい。
そんな理由で付き合いたいと思うほど、もう自分は子供ではないと大輔は思っていた。
でも美保は昔も今も感じが良かった。
すごくざっくりとした言い方になってしまうけれど、女の子たちを含めたバイト仲間の誰もがそう思う子だった。
それに笑顔がかわいかった。
それが美保の「感じのよさ」を引き立てているということもあるのだろう。
そんな日々が続いていたある日。
仕事を終えた大輔たちは店内のボックス席に座り、みんなでいつものように話しをしていた。
その中には美保の姿もあった。
仕事が終わればその席でくだらない話から真剣な話まで、朝方までみんなで話しをすることが当たり前だった。
「俺これからどうしていけばええかなー。
夢ある人うらやましいよな。
俺サラリーマンなるしかないんやろか。」
寝転んであくび混じりにそう言った大輔だったが、次第にみんなで真剣に語り始め、その日はそれぞれの夢や将来のこと、さらには夢や目標というもの自体について話していた。
しばらく話していると美保が話し始めた。
「私、例えば俳優になりたいとか会社おこしたいとか大きな夢持ってる人達もすごく素敵やと思うんやけどなんていうか、
大切なのは職業とかじゃないと思うかな。
なんか何してるときが一番幸せやろって考えて、その幸せに向かっていくというか。
例えば親とずっと近くにいることが自分の一番の幸せと思う人がいたり、友達といるときが一番幸せやって感じたり。
ご飯食べてるときが一番幸せやって言う人だってきっといるやん?
お金持ちになりたいとか漠然としてても、それならどういう道を歩いていけばそうなれるかって考えていけるというか。
何かあんまうまくは言えへんけど。」
そう言って少し照れくさそうな表情を浮かべながらも美保は続けた。
「そしたら大きな夢持つこととか、良い大学入って大企業で安定した生活を送るってことだけが夢を持つってことじゃないというか。
もちろんそんな道を歩むことも素敵やしすごいと思うんやけど、
だから実は誰もが夢を持ってるんと違うかな?
もちろん理想なんやけど私はそうありたいというか。」
みんなは黙って美保の話を聞いていた。
大きな夢を持てない自分にもどかしさを感じながらもどうすればいいのかわからなかった大輔にとって、まだ具体的につかめたわけではなかったけれど美保のその言葉たちは何か糸口を見出させてくれるものであるように感じさせてくれた。
「私の夢は幸せな家庭で優しい旦那さんとかわいい子供たちと暮らしたいねん。」
恥ずかしそうに美保はそう付け足した。
「どんだけかわいい夢やねん。」
大輔がそうツッコんでみんなで笑った。
その場にいたメンバーの平均年齢は20歳に届くか届かないかくらいだったけどみんなそんな生活をしながらも実は日々もがいていたし、それぞれが将来のことを考えていた。
どうしてか解答例のようなものが存在して、選択肢が少なく感じてしまう世の中に戸惑いながらも、それぞれ美保の言葉を受け止めていた。
その時の時間は深夜3時を回っていた。