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第19話「愛の形」<大輔>
大作と沙知の姿は大輔の心に残り、頭にこびりついて離れなかった。
美保の何が好きなのかがわからなくなって別れを切り出した自分は美保に何を求めていたのかも考えてみればよくわからなかった。
好きという気持ち自体が思い出せなくなって、恋愛はしばらくいいなんてことすら口にしていた。
でも考えてしまわずにはいられなかった。
ずっと美保のことを考えていた大輔はまだ何一つ答えなんて見つかっていなかったけど、ひとつだけどうしてか自分の心の中に現れた気持ちを抑えられなくなり始めていた。
「美保に会いたい。」
大輔は自分でもその気持ちの正確な理由もよくわからなかったが、そう思うとその心が体を連れていくまでに時間はかからなかった。
どうなるのかもわからなければ、会って何を言うのかも決まらない。
それに今美保が自分のことをどう思っているのかさえわからなかった。
大輔にとってその時の気持ちはまだ「自分のため」が先ではあっただろう。
でも今までとは違う気持ちがそこには生まれていた。
その気持ちは繰り返されて、育まれて、いつしか形になるかもしれない。
美保の家の前に着いた大輔が美保に電話をすると三回ほどのコールで美保はすぐ電話に出た。
「もしもし?」
「…。今家の前まで来たんやけどちょっと話せへんかなって思って。」
「自分のため」が「相手のため」になるんじゃなくて、「相手のため」が「自分のため」になる時。
そこに愛が生まれ来る。