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第3話「出会い」<大作>
今年の新入社員は合計9名でそのうち大作の部署に配属されたのは3名だった。
社会人11年目の大作にとって新入社員の存在は慣れたもので、一生懸命にメモをとっている姿や質問をしてくる姿を微笑ましく感じていた。
最初の週末に新入社員の歓迎会があった。
幹事は社会人2年目のメンバーが担当していた。
新入社員の入りたてで、一番挟まれて苦労するのが彼らである。
15名ほどの人数での会で大作は会費を支払い、
「ありがとな。」
と一声だけかけて席についた。
大作の周りには1人の新入社員が座っていた。
短大を卒業したばかりで20歳の唯一の女性新入社員である田中沙知(たなかさち)だった。
すごく申し訳なさそうに座る彼女を見ていて何か話しかけねばならないと、大作は出身地の話しや今週1週間の仕事の話し、家族の話しなどを続けて話しかけていた。
控えめではあるがよく笑う、笑顔のかわいい人だった。
大作は自分には姉と弟しかいないながらも妹のような、そんな感覚すら感じていた。
でもどこかで自分も気を使っていたのだろう。
その歓迎会の帰り道、いつもとは違う疲れが大作の体についてきていた。
仕事に生きていれば、付き合いというものを避けることはできない。
仕事以外での生活が充実している感覚のない大作にとって、そんな想いは一層強くなっているのであった。