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第4話「突然の告白」<大作>
それからも大作は勤勉な日本人の代表であるかのように一生懸命に働いた。
日々の残業さらには休日でさえ返上し、仕事に精を出した。
大作にとって暇だと感じる時間のないその生活はすごく充実したもののようにも感じられた一方で、もちろん味気のないものでもあった。
それでもその生活以外に自分の生活というものを見つけられずにいた大作は一生懸命にひたすらに働いていた。
そんな生活がさらに約半年過ぎた頃。
いつものように仕事を終え、帰り支度をしていた大作に歓迎会で話しをした新入社員の沙知が声をかけた。
「谷口さん、あの…」
「どうした?何かわからないことある?」
もじもじと話しかけてきた沙知に大作は少し不思議な感情を抱きながらもそう答えて沙知の次の言葉を待った。
「えっと、その…」
「ん?」
大作の鼓動は少し速くなり始めていた。
一体何を言われるのだろう。
大作がそう思った瞬間。
「すみません!お願いします!」
少し大きめの声で沙知はそう言うと机の上に手紙を置いて立ち去った。
足早に去っていく沙知に大作は何も言うことができず、そこに一人取り残された。
驚いた大作は一体何が起こったのだろうかと考えることしかできず、すぐにはその手紙を開くことすらしなかった。
しかしふと冷静さを取り戻し、大作は机の上に置かれたその手紙を開いた。
それはラブレターだった。
それがラブレターだったことによってさっきの沙知の行動の理由がある程度理解はできたがさっきまでのそれとは違う困惑が大作の胸の中を埋め尽くしていた。
仕事だけに生きていた大作にとって、その手紙は入り込める余地のないものであり、ただ単に自分を困惑させるものであった。
その時の大作は沙知からのラブレターが今の自分の生活を崩してしまうものであるかのように感じていた。
「明日からどうしようかな…」
いや、そう自分に言い聞かせていただけだったのかもしれない。