第7話「電話が繋げてくれる声」

浩司が東京に行ってからも祐介と浩司の二人は週に一度は連絡を取っていた。
はたから見ればまるでカップルのようで気持ち悪かったのかもしれない。

でも何かあればお互い相談をしていた二人にとって、その時間は大切な時間だった。

電話では仕事はどんな感じだとか次はいつ帰る予定だとか、お互いの近況を話すことが多くなっていた。

「てかな、あの駅前のボーリング場リニューアルして綺麗になったで。」
「マジかー。帰った時はボーリングとかも行きたいなー。」

もちろんそんな何てことないことも話していた。
少しでも楽しいことや進んでいること、何でもいいから祐介は浩司にそんなことを伝えたかった。

「祐介も歌はあれからどうなん?」
「まあ難しいけどほんま少しずつは進んでるかな。やり始めてわかってきたようなこともたくさんあるし。」

浩司も祐介のことが気になっていた。
お互いがお互いを応援していたし、刺激を与えてくれるそんな会話はわくわくできて楽しかった。

「ええ感じやん。俺も夏までには中小企業診断士の資格とろうと思って、土日は喫茶店で勉強してるわ。まあ東京でやることもないからちょうどいいしな。」
「そうかーええ感じやんけな。帰ってきた時にお互いいい報告できるようにしたいな。」

祐介はそのとき同時に中小企業診断士は中小企業に対して経営相談を受けたり、経営支援を行うことのできる資格で合格率が数パーセントの難しい資格だということを浩司に教えられた。

そんな難しい資格に仕事をこなしながら、東京の地で挑戦している浩司を祐介は誇らしく思い、何より嬉しかった。

電話がつなげてくれるそんな声はどれだけ離れても、今も二人が歩いている道がつながっていることを教えてくれていた。

「てか夏過ぎたくらいの平日遊びに行ってもいい?」
「いいけど平日は俺仕事やで?」
「まあ正直お前に会いに行くというよりは東京に行ってみたいだけやし、それは全然大丈夫やわ。昼間はギターの練習でもしてるし。」
「なんやねんなそれ。まあ俺は全然大丈夫やし、夜飯くらいは食いに行けるな。」

笑いながら交わされた何てことないその会話は二人の日々に活力をプラスした。

「まあそれまでに一回大阪帰るし、またそん時にでも言ってや。」

負けていられない。
お互いがそう感じていた。

必ず良い報告をしたい。
少し前までは進んでいく時間に不安を感じていた。

でも今はこの心を持って進んでいく時間が自分たちの体をどう運んでいってくれるのだろうかと、その時の二人はわくわくしていた。

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