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第7話「長い目で見るということ」
それからも今まで通りで、連絡する回数が増えたわけでも会う回数が増えたわけでもなかったが二人の関係は続いていた。
そしてその月も一か月に一度会う約束をしている日がやってきた。
その日は恵美が京都に来る番の月で二人は朝十時に京都の河原町駅で約束をして、ぶらぶらと買い物を楽しんだ。
夜ご飯は近くにあった居酒屋で済ませて、夜は太一の家に泊まった。
その夜二人でゆっくりテレビを見ている時に太一が何てことない感じで恵美に話しかけた。
「将来一緒に暮らすとこって別に京都でも良いん?」
二人は久しぶりに会うからといって特別なことをすることはほとんどなかった。
誕生日やクリスマスなんかには特別なお祝いもしたけれど、どこかに行きたいとか、何かを見たいとか、これを食べたいだとか、そういうこだわりというものが二人にはあまりなかったし、久しぶりに会うからといってその時間は別に特別な時間ではなかった。
恵美が京都にいた時とほとんど同じ時間の過ごし方だった。
家でのそんな時間も何てことない時間でいつものようにその時間は流れていた。
その太一の将来の決定事項に対する何気ない言葉にに恵美はくしゃくしゃの笑顔で答えた。
「どこでもいいよ。」
そう言われて太一もテレビから視線をはずしてくしゃくしゃの笑顔でこう返した。
「そっか、じゃあこっちに呼べるようにせなあかんな。」
そんな二人の時間は別に特別な時間ではなかったけれどこの大切な時間はこの先も必ず続いていく。
今ここに少ししかない時間を悔やんで、泣いてぐしゃぐしゃになるくらいならこれから続いていくもっと長い先を思って、くしゃくしゃな笑顔であなたの帰りを待っているから。
「絶対一緒に暮らせるようにしような。」
そう言いながら太一はまたいつものようにその次の日もくしゃくしゃな笑顔で恵美を送り出した。